近年、目まぐるしくIT化が進み、便利なアプリ・ソフトウェアが次々と開発されています。しかし、普段の業務に忙しい飲食店などの小売業の方々は、お店のIT化に四苦八苦しているのではないでしょうか。お店の売上から利益管理、人件費、販管費、営業損益、在庫管理、アルバイトのシフト管理、給与計算など、管理・経理業務は素人にはとてもたいへんで時間を要するものです。
そんな飲食店向けに、小林由尚さんが便利で手頃な価格のアプリを開発しました。実際に飲食店を経営しながら作ったシステムなので、現場の経営者目線から作られた「ちょうどいい」アプリだそう。小林由尚さんから、起業の話やアプリ開発の秘話などを伺いました。
起業後、仕事はどのように得てきたのでしょうか?
初めのうちは静岡市内の企業や、創業したばかりの人などを対象としたITアドバイザリーサービスが中心。確定申告を依頼した会計事務所様からの縁があって「しずおか創業スクール」の講師をすることがあり、その時に知り合った方から仕事をいただくこともありました。IT関係ということでホームページ制作の仕事をいただくことも。webデザインはできなかったので、友人のデザイナーに発注するなど、少しずつ業務も拡大。それとともに、つながりもどんどん広がっていきました。
ITアドバイザリーサービスというのは、企業に依頼するとそれなりの金額がかかるもの。自分のような小規模な会社ならそこまで高額にならないせいか需要があるようです。パソコンの調子が悪いといったLINE等で回答するような簡単なアドバイザー業務から、大企業のネットワーク設計・構築、システム開発など、起業から6年弱、現在では仕事の幅が広がりました。今は、事務等を在宅勤務でサポートしてくれるスタッフと一緒に業務を行っています。
ソフトウェア開発について、新しいサービスの形を考えたとのことですが…
ソフトウェアは、開発に何百万円、何千万円もかかります。大手企業であれば、そういった費用を用意することができると思いますが、中小企業や飲食店のような小売店は、開発費用を工面することは決して容易ではありません。初期費用に何百万円もかかるという、そういったソフトウェア開発の手法自体にも疑問を感じていました。
そこで考えたのは、開発費用を最初にいただくというのではなく、作ったソフトウェアをまずは使ってもらい、月額などで使用料をいただくという形。気に入ってもらえれば長く使っていただけますし、最終的に開発費用を回収できればと考えています。
まちづくりにITで貢献したいとのことですが、具体的な事案があるのでしょうか?
実は、飲食店向けのソフトウェア開発に関心があったんです。静岡の飲食店は、まだまだIT化が十分ではないと感じています。なので、飲食店向けのソフトウェア開発ができたらと思っていたんですが、飲食店のツテがなくて…。そんな時、飲食店をやってみたいという友人と、マーケティングを習得したが実践の場がほしいという友人がたまたま同級生にいたんです。それなら、「日本一IT化された個人カフェを作ってみよう」ということになり、2015年夏に静岡市中心街に「アオイパフェ」をオープンしました。
当時、すでにタブレット端末を使ったレジ決済システムを導入する店舗が出始めていた頃。安価に利用できるタブレットレジがあるのに、それを知らずに高額なシステムを入れてしまうことも。情報弱者にとって、知らないうちに不必要な高額な投資をしていると感じることがありました。そこで開発したのが、経営管理アプリです。小規模事業者にも使いやすい価格で提供していきたいと考え、作りました。
経営管理アプリは、レジ機能、リアルタイムでPL(損益計算書)がわかるシステム、シフト管理、勤怠管理、在庫管理、日報、顧客管理が一緒になったアプリなんです。学生時代、税理士を目指したことがあり、経営管理に関する基本的な知識があったのが役立ちました。キャッシュレス決済もできるんですよ。現在のお店の損益状況が、スマートフォンを通してリアルタイムで確認することができるので、お店の経営方針をすぐ見直していくこともできます。「アオイパフェ」を経営しながら生まれたソフトウェアなので、現場目線の便利なアプリになっていると思います。
今後の展望について教えてください
今は、別の飲食店と共同でセルフレジのソフトウェアを開発中。2019年早々には開発が完了する予定です。このソフトは、お客さまがレジで商品を自分で注文し、決済するサービス。すでに数店の飲食店や、自治体等が興味を示してくれていて、まずは静岡市内の街中を中心に展開し、今後は全国で展開できればと考えています。
また、地元のまちづくりにITで何か貢献できたらとも考えています。例えば人宿町専用のアプリ等があったら面白いかなと。聞いたところによると、キャッシュレスを利用する人は、今はまだ10%以下だそうです。静岡をはじめ、日本はまだまだ現金が必要な国です。静岡の街からキャッシュレス文化を構築できたら。そんなふうに考えています。
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飲食店向け経営管理アプリ
アオイパフェ